ピストバイクの最大の魅力は、変速機や無駄なワイヤー類がない「究極にシンプルな造形美」にあります。しかし、日本の公道を走る以上、前後ブレーキの装着は法律で義務付けられており(道路交通法違反となります)、ブレーキレバーとそこから伸びるワイヤーは避けて通れないパーツです。

「法律だから仕方なく付けるけれど、できる限りハンドル周りをごちゃごちゃさせたくない」「ピスト特有のミニマルな美しさを損なわないレバーはないのか」と悩むライダーは少なくありません。

実は、ピストバイクのストリートカルチャーにおいては、ブレーキを装着しつつもいかにハンドル周りをスッキリと美しく見せるかという「引き算の美学」に基づいた様々なレバーの選択肢が存在します。本記事では、定番のレバーから、一本のレバーで前後を引ける特殊なアイテムまで、ピストに最適なブレーキレバーの選び方とおすすめスタイルを徹底解説します。

ハンドル周りの美しさを損なわない定番の選択肢

まずは、ピストバイクのカスタムにおいて最もスタンダードであり、シンプルさを追求する上で間違いない2つの定番ブレーキレバーを紹介します。

「補助ブレーキレバー(インラインレバー)」の流用

ピスト乗りの中で最もポピュラーなのが、本来はロードバイクのサブブレーキとして使われる「補助ブレーキレバー」を、メインレバーとして単独で取り付けるスタイルです。

補助ブレーキレバー(例:TestachやDixnaなどの製品)は、構造が非常にコンパクトで無駄な装飾が一切ありません。これをライザーバーやフラットバーのグリップのすぐ横にちょこんと取り付けることで、レバー自体の存在感を極限まで消すことができます。ブラックやシルバーなど、ハンドルバーの色に合わせたレバーを選ぶことで、遠目から見るとブレーキが付いていないように錯覚させるほどスッキリと仕上がります。

また、ハンドル形状で走りが変わる!ドロップ・ライザー・ブルホーンの選び方でも紹介されているドロップハンドルやブルホーンバーの「フラットな持ち手部分(上ハンドル)」に装着する際にも、この補助レバーは非常に相性が良く、街中で上体を起こしてリラックスして走る際のブレーキングに最適です。コンパクトゆえに指1〜2本で引くことになりますが、街乗りでの制動力としては十分な役割を果たしてくれます。

ドロップハンドルに映える「ギドネットレバー」

ギドネットレバーの特徴とメリット
  • レバーがハンドルの内側に沿って長く伸びている特殊な形状
  • 上ハンドルのどこを握っていてもブレーキに指が届く
  • クラシックでヴィンテージ感のある美しいシルエット

クロモリの細いフレームにドロップハンドルやブルホーンバーを合わせるクラシックスタイルを好むライダーに絶大な人気を誇るのが、DIA-COMPE(ダイアコンペ)などの「ギドネットレバー」です。一般的なブラケットレバー(ロードバイクのようなツノ型のレバー)は、レバー自体が大きく前に突き出すため、ピスト特有のシンプルなシルエットを崩してしまいがちです。

しかしギドネットレバーは、ステムの近くからハンドルのカーブに沿うように横長に配置されるため、車体のシルエットを全く邪魔しません。さらに、ハンドルのフラット部分を広く握れるため、通勤時などのリラックスしたポジションのまま、どこからでもブレーキを引くことができるという圧倒的な実用性を兼ね備えています。ヴィンテージパーツとの相性も抜群なので、廃盤パーツを探せ!ヴィンテージピストの魅力とパーツ探しのコツの記事にあるようなオールドスクールなカスタムを目指すなら、絶対に外せない選択肢です。

究極のミニマルを追求する「特殊なブレーキレバー」

さらに一歩踏み込んで、周囲のピスト乗りから「おっ!」と一目置かれるような、よりマニアックで特殊なブレーキカスタムを紹介します。

1本のレバーで前後を引く「2本引きレバー」

「左右のハンドルにレバーを2つ付けることすら野暮ったい」。そんな究極のミニマリストに支持されているのが、1つのレバーから2本のワイヤーを伸ばし、前後両方のブレーキを同時に作動させる「2本引き(ダブル)レバー」です。

BMXなどの競技用自転車で使われることが多い特殊なレバーですが、これをピストバイクに流用するスタイルがストリートで密かな人気を集めています。DIA-COMPEの「Tech77W」などが有名で、ハンドルの片側(例えば右側)にだけレバーを取り付けるため、左側のハンドル周りには何もない完全な「スッピン状態」を作り出すことができます。

法律上も「前輪及び後輪を制動すること」と定められているため、1つのレバーで両方が確実に効けば問題ありません。ただし、前後同時に同じ力でブレーキがかかるため、雨の日などに強く引きすぎると後輪がロックしてスリップしやすいというデメリットもあります。そのため、スキッドなどの足での減速(バックペダリング)をメインに行い、手元のブレーキはあくまで補助的な停止用として割り切れる中級者以上におすすめのカスタムです。スキッドのコツについては、スキッドをマスター!ピスト特有のブレーキ技を練習する3つのステップを参考にしてください。

ハンドル先端に潜ませる「TTレバー(バーエンドコントローラー)」

ブルホーンバーの先端(先端の穴)に直接差し込んで固定する「TT(タイムトライアル)レバー」も、空力を追求した非常にスマートな選択肢です。

通常、ブルホーンバーの先端にブレーキを付けようとすると、ワイヤーが外側に飛び出して非常に不格好になってしまいます。しかし、TTレバーを使用し、ワイヤーをハンドルパイプの「内蔵(インターナル)」に通すか、あるいはバーテープの下に沿わせて綺麗に巻き込むことで、レバーとハンドルが一体化したような極めてシャープな見た目を実現できます。

ブルホーンの先端を握りながら深い前傾姿勢でかっ飛ばす(スピードを出す)際に、手を持ち替えることなく即座にフルブレーキングできるため、ストリートでの安全性も抜群です。ロングライドも快適!ピストバイクに最適なブルホーンバーのおすすめ5選と巻き方でも解説している通り、ブルホーンの攻撃的なシルエットを最大限に活かしたいなら、TTレバー一択と言っても過言ではありません。

ブレーキワイヤーの「ルーティング(取り回し)」の美学

どんなにコンパクトで美しいブレーキレバーを選んでも、そこから伸びる「ワイヤー」がだらしなく余っていては台無しです。ピスト乗りのセンスは、ワイヤーの処理にこそ表れます。

アウターケーブルの長さは「最短ルート」が鉄則

ワイヤーの長さ見た目の印象ブレーキの引きの重さ
長すぎてたるんでいるだらしない、ママチャリっぽい無駄な摩擦が生じて少し重い
ハンドルを切れるギリギリの短さシャープでプロっぽい摩擦が少なく、引きが軽い

ブレーキレバーからフレームのブレーキ本体へと繋がるアウターケーブル(黒や透明などの外側のチューブ)は、購入した状態のまま切らずに使うと、必ず長すぎてダブついてしまいます。このダブつきが、ピストバイクのシンプルさを著しく損なう最大の原因です。

ワイヤーを這わせる際は、ハンドルを左右に一杯まで切った時に「ギリギリ引っ張られない長さ」を計算し、ワイヤーカッターで正確に短くカット(切り詰め)することが必須です。最短ルートで美しく孤を描くワイヤーのラインは、それ自体が一種のアートのように車体を美しく見せてくれます。【自分でできる】ピストバイクのブレーキワイヤー交換手順!インナーとアウターの寿命と調整法を参考に、ミリ単位で長さにこだわってセッティングしてみてください。

トップチューブのワイヤー留め(アウターバンド)へのこだわり

ピストバイク(特にトラック競技用フレーム)には、リアブレーキのワイヤーを通すためのガイド(台座)が付いていません。

そのため、トップチューブにワイヤーを固定するための「アウターバンド」や「タイラップ(結束バンド)」を使用する必要があります。ここでプラスチック製の安っぽい結束バンドを使ってしまうと、一気にチープな印象を与えてしまいます。

見た目にこだわるのであれば、DIA-COMPEやCampagnolo(カンパニョーロ)などから発売されている、金属製の美しい「アウターバンド(ステンレス製・メッキ仕上げ)」を使用しましょう。クロモリフレームの細いパイプにクラシカルな金属バンドがキラリと光るアクセントになり、後付けのブレーキワイヤーすらもドレスアップの一部として昇華させることができます。

まとめ

ピストバイクにおいて、ブレーキレバーは「付けなければならない義務のパーツ」から「センスを主張するカスタムパーツ」へと認識を変えることで、自転車いじりの楽しさが何倍にも広がります。

ハンドル周りの存在感を極限まで消したいならコンパクトな「補助ブレーキレバー」を、クラシックなドロップハンドルを美しく見せたいなら「ギドネットレバー」を。そして、究極のミニマリズムを追求し、左ハンドルから一切のパーツを排除したいなら「2本引きレバー」という特殊な選択肢もあります。

どのレバーを選ぶにしても、最も重要なのは「ワイヤーの長さを最短に切り詰めること」と「美しいアウターバンドで固定すること」です。パーツの選び方とワイヤーの美しいルーティング(取り回し)に徹底的にこだわることで、法律を守る確かな安全性を確保しながらも、ピストバイクが本来持つ「削ぎ落とされた造形美」を完璧にキープした、あなただけの最高の一台を作り上げてください。

自転車を買った後、必要なものはここで全て揃う
自転車用品を購入するなら

ワイズロードオンライン公式ページへ