ピストを劇的にカッコよくする「ブルホーンバー」の完璧なセッティング角度と、失敗しないバーテープの巻き方
ピストバイクの印象を決定づける最も重要なパーツといえば、間違いなく「ハンドル」です。中でも、牛の角のように前方に突き出した攻撃的なシルエットを持つ「ブルホーンバー」は、ストリートカルチャーの象徴として絶大な人気を誇っています。完成車に最初から付いているドロップハンドルからブルホーンバーに交換するだけで、愛車が一瞬にして戦闘的でスタイリッシュなストリートマシンへと生まれ変わります。
しかし、ブルホーンバーはその特殊な形状ゆえに、「ハンドルの取り付け角度」や「バーテープの巻き方」に特有のコツがあり、これらを間違えると見た目がダサくなるばかりか、本来の乗りやすさまで損なってしまいます。本記事では、ブルホーンバーの魅力を120%引き出すための完璧なセッティング角度の法則と、初心者でも絶対に失敗せず美しく巻けるバーテープの手順をプロの視点から徹底解説します。
ピストバイクを戦闘的なルックスに変える「ブルホーンバー」の魅力
そもそも、なぜこれほどまでにピストライダーはブルホーンバーに惹かれるのでしょうか。見た目のカッコよさはもちろんのこと、ストリートをタフに走り抜けるための非常に合理的な機能性が隠されています。
牛の角のように前方に突き出したフォルムがもたらす圧倒的なストリート感
ブルホーン(Bullhorn=雄牛の角)という名前の通り、両端が前方に向かって鋭く伸びたその形状は、他のどの自転車ジャンルにも見られない、ピストバイクならではの無骨で攻撃的なシルエットを作り出します。極太のエアロフレームやディープリムホイールと組み合わせた時の相性は抜群で、停車している姿を見るだけで「速そう」「ヤバそう」というオーラを強烈に放ちます。ロードバイク用のドロップハンドルの下半分を切り落としたような形状であるため、無駄なパーツが一切ないミニマルなピストバイクの美学(引き算の美しさ)に完璧に合致するのも、ストリートで愛され続ける大きな理由です。街中を颯爽と駆け抜ける姿は、周囲の視線を釘付けにすること間違いありません。
複数のポジション(握る位置)を使い分けられる機能的なメリット
ブルホーンバーは見た目だけでなく、実用性においても極めて優秀なハンドルです。一直線のライザーバーが「手前の一箇所」しか握れないのに対し、ブルホーンバーは「ステム付近のフラットな部分」「前方に伸びる角の付け根(肩)」「角の先端」という、距離の異なる複数のポジションを状況に応じて持ち替えることができます。
これにより、街中でのんびり走る時は手前を握って上体を起こし、向かい風や全力で加速したい時は角の先端を握って深い前傾姿勢をとる、といった変幻自在のライディングが可能になります。
初心者が陥りやすい罠!ブルホーンバーの「ダサい角度」と「正しい角度」
ブルホーンバーを新しく買った初心者が最もやってしまいがちなのが、「ハンドルの取り付け角度のミス」です。角度が数度違うだけで、自転車全体の美しさが完全に崩壊してしまいます。
角が上を向きすぎている「カブトムシ状態」は見た目も操作性も最悪
街中を走るピストバイクを見ていると、ブルホーンの角の先端が天に向かって垂直に近い角度で反り上がっている、通称「カブトムシ状態」になっている車体をよく見かけます。これは、「角の先端を握った時に体が起き上がって楽だから」という理由でやってしまいがちですが、ストリートの美意識においては完全にNG(ダサいセッティング)とされています。見た目が不格好になるだけでなく、いざ角を握って力を込めようとしても、手首が不自然に上へ折れ曲がってしまうため、ペダルに体重が全く乗らず、ダンシングも非常にやりにくくなります。また、ブレーキレバーの角度も上を向いてしまい、とっさのブレーキングが遅れるという安全上のデメリットも発生します。
地面と平行、もしくはわずかに前下がりが最も美しく力が入るセッティング
ブルホーンバーの美しさと機能性を最大限に発揮する「正しい角度」の黄金律はズバリ、「ハンドルのフラット部分(持ち手)が地面と完全に平行か、あるいは先端に向かって数度(2〜3度)前下がりになる角度」です。
この角度にセットすることで、トップチューブの水平ライン(ホリゾンタル)とハンドルのラインが見事に同調し、自転車全体が前傾姿勢で獲物を狙う獣のような、最も美しいシルエットを描き出します。
ステムの種類とクランプ径に合わせたブルホーンバーの正しい選び方
いざブルホーンバーを購入しようとショップやネット通販を覗くと、太さや形状の違いで多くの種類が存在することに気づきます。自分の自転車に確実に取り付けるための規格の知識を解説します。
25.4mmと31.8mm(オーバーサイズ)のクランプ径の違いと互換性
ハンドルの中央部分(ステムで挟み込んで固定する部分)の太さを「クランプ径」と呼びます。現在流通しているピストバイクのハンドルには、主に「25.4mm」と「31.8mm(オーバーサイズ)」の2つの規格が存在します。購入するブルホーンバーのクランプ径と、現在お使いのステムのクランプ径が完全に一致していなければ、取り付けることは絶対にできません。クラシックな細身のクロモリフレームには25.4mmの細いハンドルがよく似合いますが、近年のLEADER BIKESのような極太アルミフレームには、剛性が高く見た目の迫力もある31.8mmのオーバーサイズが主流となっています。もし使いたいハンドルのクランプ径が今のステムと合わない場合は、ハンドルと一緒にステムごと新しい規格のものに買い替える必要があります。
スレッドステムとアヘッドステムで変わる、最適なハンドルの「落差」の作り方
ピストバイクのステムには、フォークの筒の中に差し込んで固定する「スレッドステム」と、フォークのパイプの外側から挟み込む「アヘッドステム」の2種類があります。ブルホーンバーは角の部分を握るとポジションがかなり前方に伸びるため、ハンドル全体の高さ(サドルとの落差)を低く設定しすぎると、腰痛の原因になります。
スレッドステムの場合は、ボルトを緩めてステム自体を少し上に引き上げることで簡単に高さを調整できます。一方、アヘッドステムの場合は、[ネットで買ったピストのサイズが合わない!ステム長とサドル位置で身長差をカバーするセッティング術](https://pistebike.com/wrong-size-frame-adjust/)の記事で紹介した「天地返し(ステムを上下逆さまに付ける裏ワザ)」を使って高さを稼ぐのが効果的です。
ブルホーンバーの魅力を引き出す「バーテープ」の選び方と巻き始める前の準備
ブルホーンバーは金属むき出しの状態で乗る猛者もいますが、滑り止めや疲労軽減のために「バーテープ」を巻くのが一般的です。仕上がりの美しさは、テープ選びと下準備で8割が決まります。
クッション性重視のコルクか、グリップ重視のポリウレタン(DSP)か
バーテープの素材によって、握り心地や見た目の雰囲気は大きく変わります。定番の「コルク素材(EVAフォーム等)」は、安価でクッション性が高く、手が痛くなりにくいため長距離の街乗りに最適です。クラシックなピストに合わせたレザー(本革)調のものも人気です。一方、近年ストリートで爆発的な人気を誇るのが、Lizard Skins(リザードスキンズ)等に代表される「ポリウレタン(DSP)素材」のバーテープです。薄手でダイレクトな握り心地でありながら、汗や雨に濡れても手に吸い付くような強烈なグリップ力を発揮するため、スキッドやトリックでハンドルを強く引き寄せるハードなライダーに熱狂的に支持されています。自分の用途に合わせて素材を選ぶことが快適なライドの第一歩です。
古いテープの剥がし跡の清掃と、ブレーキアウターケーブルのビニールテープ固定
新しいバーテープを巻く前に、必ずやっておかなければならない下準備があります。それは「土台を完全にフラット(平ら)にする」ことです。
古いバーテープを剥がした後に残っている両面テープのベタベタした糊の跡は、パーツクリーナー等を使って完全にこすり落としてください。糊が残っていると、新しいテープが綺麗に密着せず、すぐにズレてしまいます。
素人でも絶対に失敗しない!ブルホーン特有のバーテープの巻き方手順
ドロップハンドルのバーテープ巻きは難易度が高いと敬遠されがちですが、実はブルホーンバーのバーテープ巻きは「一番難しいブラケット(ブレーキレバーの土台)周りの処理」が存在しないため、初心者でもコツさえ掴めば非常に美しく巻くことができます。
バーエンド(先端)から巻き始め、ステムに向かって均等な重なり幅で巻き進めるコツ
バーテープは必ず「ハンドルの角の先端(バーエンド)」から巻き始め、中央の「ステム」に向かって巻き進めていきます。この方向で巻くことで、テープの重なり目がウロコのようになり、手を前に滑らせた時にテープがめくれ上がりにくくなります。
- ハンドルの先端から、テープの幅の「3分の1」を余らせてはみ出させた状態から巻き始める
- 常にテープを「少し強めに引っ張りながら」テンションをかけて巻いていく
- テープの重なり幅が、常に「全体の3分の1」から「半分」になるように均等な幅をキープする
- ハンドルの曲がり角(肩の部分)は、内側の重なりを大きく、外側の重なりを小さくしてシワを防ぐ
最初に先端で余らせたテープは、最後にバーエンドキャップ(栓)を押し込む際に一緒にハンドルの筒の中に押し込んで固定するため、必ずはみ出させておくのがポイントです。
最も難しいカーブ部分(肩)の処理と、フィニッシュテープでの美しい仕上げ方
巻き進めていき、ハンドルが直角に曲がる「肩」の部分に差し掛かると、テープにシワが寄りやすくなります。ここでは焦らず、テープを普段より少し強めに引っ張りながら、カーブの外側はテープの縁ギリギリを重ね、内側はテープの半分以上を深く重ねるようにして角度をつけて巻いていくと、シワのない美しいカーブを描くことができます。フラット部分をステムの近くまで巻き終えたら、最後はテープをハサミで「斜め」に切り落とします。斜めに切ることで、巻き終わりが一直線の綺麗なラインになります。最後に、付属のフィニッシュテープ(または黒いビニールテープ)を巻き終わりの部分に2〜3周しっかりと巻きつけて固定すれば完成です。自分で美しく巻いたバーテープは、愛車への愛着を何倍にも深めてくれます。
まとめ
ブルホーンバーは、ピストバイクをより攻撃的でスタイリッシュなストリートマシンへと変貌させる最強のカスタムパーツです。
その魅力を最大限に引き出すためには、ハンドルのフラット部分が「地面と平行〜やや前下がり」になる正しい角度設定が命となります。「カブトムシ状態」のダサいセッティングを避け、ホリゾンタルフレームと美しく同調するラインを探し出しましょう。
また、バーテープの巻き方も、コルクやDSP素材など自分のライディングスタイルに合ったテープを選び、事前のケーブル固定などの下準備を丁寧に行うことで仕上がりに雲泥の差が出ます。角の先端からステムに向かって、テープを少し引っ張りながら均等な幅で巻いていくという基本ルールを守れば、初心者でも必ず美しく巻くことができます。完璧にセッティングされたブルホーンバーを握りしめ、かつてない加速感と一体感をストリートで存分に味わってください。
