「ピストバイクのクランクをカスタムしたいけれど、長さが何種類かあってどれを選べばいいかわからない…」

「ピストでは『165mm』が良いとよく聞くけれど、ロードバイクで一般的な『170mm』と何が違うのだろうか?」とお悩みではありませんか?

クランクは、ライダーの足裏から繰り出されるペダリングの力を、チェーンを介して後輪へとダイレクトに伝える自転車の「心臓部」とも言える極めて重要なパーツです。

そして、ペダルの回転軸からペダル取り付け位置までの長さを指す「クランク長」のわずか「5ミリの差」は、あなたのピストバイクの走りと快適性を文字通り劇的に激変させます。

ロードバイク等のスポーツ自転車では身長に合わせてクランク長を選ぶのが基本ですが、ピストバイク(固定ギア)の世界には、ストリートライディングならではの独自の「クランク長の選び方の物理とセオリー」が存在します。

この記事では、ピストにおけるクランク長「165mm」と「170mm」の徹底的な違いと、あなたに最適なクランク長の選び方について詳しく解説します。

タップできる目次
  1. なぜクランク長はピストバイク(固定ギア)の走りにおいて重要なのか?
  2. ピストのストリートカルチャーで「165mm」が圧倒的な主流となっている理由
  3. ロードバイク等で一般的な「170mm」クランクをピストで使うメリットと特性
  4. あなたにピッタリなのはどっち?身長や体格、乗り方から決める選び方
  5. クランク長を変更する際に「同時に見直すべき」自転車の調整パーツ
  6. クランクをアップグレードするなら絶対に手に入れたい憧れの名作クランク
  7. まとめ

なぜクランク長はピストバイク(固定ギア)の走りにおいて重要なのか?

わずか5ミリの差が、走りのクオリティと疲労度を天と地ほど分ける。ピストにおけるクランク長の重要性を物理的なアプローチから紐解きます。

走行中ずっと強制的に脚が回り続ける固定ギアならではの疲労度への影響

一般的なフリーギアの自転車であれば、クランク長が少し長すぎてペダリングがやりにくくても、疲れたら足を止めてサボることができるため、筋肉や関節へのダメージはそれほど深刻化しません。

しかし、後輪とペダルが直結し、走行中に脚が1秒も止まらず強制的に回り続けるピストバイク(固定ギア)では、話が完全に異なります。

クランク長が自分に適していない場合、ペダルが描く「円の軌道(回転の直径)」がわずかに大きすぎるだけで、膝や股関節にかかる負担が何千回転、何万回転と蓄積し、深刻な関節痛や急激な疲労を引き起こす原因になります。

クランクアームの長さは、強制的に回され続けるあなたの脚の「関節の可動域」を決定づける極めて繊細なセッティング項目なのです。

クランク周りのカスタムや駆動効率の違いについては、こちらのピストクランク比較解説も非常に参考になります。

ギヤ比とケイデンス(ペダル回転数)の管理に直接作用する物理的なテコ比

物理の法則において、クランクアームはペダルを踏む力をスプロケットに伝える「テコ(杠杆)」そのものです。

クランクアームが長ければ長いほど、テコの原理が強く働くため、同じギア比であっても「より少ない力で力強くペダルを踏み込む(大きなトルクを生み出す)」ことができます。

逆に、クランクアームが短くなると、テコが小さくなるため、ペダルを踏み込む際により強い脚力(踏力)が必要になります。

しかし、アームが短くなることで、ペダルが描く円の直径が小さくなるため、同じ脚の動かし方であっても、よりスピーディーにペダルを高回転(ハイケイデンス)させることが容易になります。

クランク長は、あなたのピストの「ギヤ比」の体感的な重さと、快適に回せる「ケイデンスの限界値」を直接コントロールする物理的なアームギアなのです。

ギア比の計算やスキッドポイントとの関係については、こちらのピストバイクギア比のセッティングガイドも併せてご覧ください。

ピストのストリートカルチャーで「165mm」が圧倒的な主流となっている理由

ロードバイクの世界基準とは異なり、なぜピストのストリートや競輪では「165mm」という短いクランクが圧倒的なシェアを誇っているのか、その理由を解説します。

急なコーナリングやバンク傾斜でペダルが地面に激突する「ペダルヒット」の防止

ストリートを走るピスト乗りにとって、短い「165mm」クランクを選択する最大の、そして絶対に無視できない物理的な理由は「ペダルヒット(ペダルの路面激突)」の防止にあります。

固定ギアのピストは走行中にペダルを止めることができないため、交差点を曲がるために車体を内側に深く傾けて(ハイスピードでコーナリングして)いる最中にも、ペダルは下死点(真下)へと回り続けます。

もしクランク長が長く、さらにボトムブラケット(BB)の位置が低いフレームを使用していると、車体を傾けた瞬間に、下に向かって回ってきたペダルが「コンクリートの路面に強烈に激突」します。

走行中にペダルが地面に当たると、後輪が一瞬で浮き上がって完全にコントロールを失い、ハイスピードで路面に叩きつけられる大怪我(落車事故)に直結します。

クランク長を165mmに短くすることで、ペダルと路面のクリアランス(隙間)を物理的に5ミリ広げ、この恐ろしいペダルヒットの転倒リスクを劇的に減少させることができるのです。

ペダリングの回転軌道が小さくなることによる滑らかな高回転(ハイケイデンス)の維持

もう一つの理由は、トラック競技(競輪)のDNAから受け継がれた「高回転ペダリングのしやすさ」です。

クランクが165mmと短くなると、ペダルが1回転する際に足が描く円の直径が、170mmと比べて「10ミリ(1センチ)」も小さくなります。

直径が1センチ小さくなることで、ペダリング時に太ももを上までグッと引き上げる高さ(股関節の屈曲角度)が浅くなり、脚の上下運動の無駄なストロークが大幅にカットされます。

これにより、時速30キロ以上のハイスピード巡航時や、下り坂に差し掛かって後輪に強制的に足を回される局面において、ブレることなく「くるくると滑らかに超高回転(ハイケイデンス)を維持する」ことが非常に容易になります。

ストリートでのストップ&ゴーを軽快にこなし、無駄なエネルギーを使わずに滑らかな高速巡航をキープするために、165mmという短いクランクは最高の武器となるのです。

ペダルストラップを使用した効率的な引き足と回転のコツについては、こちらのペダルストラップとビンディングの違い解説も非常に役に立ちます。

ロードバイク等で一般的な「170mm」クランクをピストで使うメリットと特性

主流が165mmだとしても、あえて長めの「170mm」をピストにアッセンブルするメリットとは何か。その推進力とトルクの特性を解説します。

テコの原理(クランクアームの長さ)が最大化することによる強力な踏み込みトルク

あえて「170mm」のクランクアームを選ぶ最大のメリットは、テコの原理が最大化することによる「圧倒的なペダリングトルク(力強い踏み込み)」にあります。

アームが5ミリ長くなるだけで、ペダルを踏み込んだ時にリアホイールを前に押し出すクランクの推進回転力が物理的に大幅にアップします。

これにより、信号待ちからのゼロスタート時や、街中の急な坂道を立ち漕ぎ(ダンシング)でグイグイと登るような局面に置いて、驚くほど軽い踏み心地でピストを前へと押し進めることができます。

「脚力には自信があるけれど、軽いギア比で回すより、重めのギア比をグイッと踏み込んでダイナミックに加速したい」というトルク重視のパワーライダーにとって、170mmクランクは極めて気持ちの良い加速フィールを提供してくれます。

加速時や坂道での立ち漕ぎスキッド時に大きな力を伝えやすいという利点

さらに、ピスト特有のトリックである「スキッド(後輪ロック)」や「バックを踏む」減速動作においても、170mmの長いクランクは非常に大きな味方となります。

スキッドをする際、前足を引き上げながら、後ろ足でペダルを強く踏み込んで後輪の回転を完全に静止させる必要があります。

この際、クランクが長い(170mm)方が、テコの作用によって「後輪の回転に逆らう後ろ向きのブレーキ力」をより小さな脚力でダイレクトに伝えることができます。

「脚の力が弱くて、165mmクランクだとスキッドで後輪をロックさせるのがしんどい…」という方でも、クランク長を170mmに変更するだけで、驚くほど簡単に、小さな力で後輪をピタッとロックできるようになります。

スキッドの重心移動や基本のコツについては、こちらのスキッド完全マスターガイドも参考にしてください。

あなたにピッタリなのはどっち?身長や体格、乗り方から決める選び方

自分の体格とライディングスタイルを冷静に分析し、どちらのクランク長が一生の相棒としてふさわしいかを導き出すセオリーを解説します。

身長170cm以下や街乗り高回転クルージング・安全重視なら「165mm」がベスト

あなたの身長が「170cm以下(特に小柄な男性や女性)」であり、街中でのペダルヒットの安全対策を最優先させたいなら、間違いなく「165mm」のクランク長が最高の選択肢になります。

股下(脚の長さ)に対してクランクが長すぎると、ペダリング時に膝が高く上がりすぎてお腹を圧迫し、腰がサドルの上で左右にピョコピョコ揺れる「不格好で痛みを伴うペダリング」になってしまいます。

また、ピストで通勤や街乗りをメインに行い、信号でのストップ&ゴーが多く、コーナーをスピーディーに曲がりたい場合も、165mmであればペダルヒットの恐怖心が完全に消え去り、抜群の安心感を持ってストリートを攻めることができます。

軽快に高ケイデンスでペダルを回し、しなやかでおしゃれにストリートを流したい方は、165mmを選んでおけば絶対に後悔することはありません。

身長175cm以上やパワフルな踏み込み・長距離ロングライド重視なら「170mm」

逆に、あなたの身長が「175cm以上」と体格に恵まれており、ロードバイクのような「ロングライド(長距離巡航)」や、重めのギア比を力強く踏み込むパワフルな走りを重視したいなら、「170mm」のクランク長が非常に適しています。

体格が良いライダーにとって、165mmは円の軌道が小さすぎて「足元がこちょこちょと忙しく回りすぎる」ような物足りなさを感じるケースがあります。

170mmであれば、自分の長い脚のストロークをフルに活かして、大きな円でダイナミックかつ力強いペダリングを行うことができます。

ただし、170mmを街乗りピストで使う場合は、交差点を曲がる際に「内側のペダルを絶対に真下(下死点)に置かない、傾けすぎない」という安全への配慮とスキルを意識することを忘れないでください。

クランク長を変更する際に「同時に見直すべき」自転車の調整パーツ

クランク長を5ミリ変更した際、自転車の「他のパーツの調整」を行わないと、かえって乗り心地が悪化してしまう重大な注意点とフィッティングを解説します。

クランク長が短くなることによるサドルの高さと前後位置の再調整

クランクアームの長さを変更した際、絶対に最初に行わなければならないのが「サドルの高さの再フィッティング」です。

例えば、クランク長を「170mmから165mm」へ5ミリ短くした場合、ペダルが最も下にきた状態(下死点)の位置が、以前よりも「5ミリ上に持ち上がる」ことになります。

つまり、以前と同じサドルの高さのままだと、ペダルを踏み込んだ時に膝が余分に曲がってしまい、脚の筋肉を効率よく使えなくなります。

クランクを短くした際は、サドルの高さを「5ミリ上に上げる」のが鉄則のセッティングです。

サドルを5ミリ上げることで、ペダル下死点での膝の伸び具合が以前と全く同じ完璧なポジションに戻ると同時に、ペダルが最も上に来た時(上死点)には、以前よりも「10ミリ(1センチ)」も膝の位置が下がるため、驚くほど股関節の曲がりが楽になり、ペダリングが劇的に軽快になります。

サドルの正しいフィッティング手順や微調整については、こちらのサドルの高さと前後位置の調整方法で詳しく解説されています。

ペダルヒット対策としてクランクと相乗効果を生み出す「薄型ペダル」の導入

クランクを165mmに短くしてペダルヒット対策を行う際、さらにその安全効果を何倍にも跳ね上げてくれる相乗効果カスタムが「薄型のフラットペダル」や「シャープなトラックペダル」への交換です。

いくらクランクを短くしても、ペダル自体がママチャリ用の分厚く横に広いプラスチックペダルであっては、ペダルの底面や外側の角が簡単に地面に擦れてしまいます。

おすすめは、アルミ削り出しで作られた、厚みが1.5センチ以下の「極薄のプラットフォームペダル」や、有名ブランド「MKS(三ヶ島製作所)」の「SYLVAN TRACK(シルバントラック)」などの細身の金属ペダルです。

クランクアームの短さと、ペダル自体の薄さ・細さが組み合わさることで、車体を深くバンクさせてコーナリングをしても地面をかすめることすら完全にゼロになり、ストリートを誰よりもハイスピードかつ安全に駆け抜けることができる無敵の足回りが完成します。

クランクをアップグレードするなら絶対に手に入れたい憧れの名作クランク

いつかは手に入れたい、世界中のピスト乗りが憧れる2大最高峰クランクモジュールをご紹介します。

トラック競技からストリートまで世界を支配する王道「SRAM OMNIUM(オムニウム)」

世界中のメッセンジャーやストリートピスト乗りから「神のクランク」として崇められ、今や伝説的な存在となっているのが「SRAM(スラム)」の「OMNIUM(オムニウム)」です。

このクランクは、アームに巨大なアルミの中空鍛造技術を使用しており、クランク全体のねじれ剛性が他のクランクとは比べ物にならないほどカチコチに硬いのが特徴です。

さらに、クランクの左右の回転軸をフレームの外側に配置する「アウトボードBB(GXP規格)」をいち早く採用しており、踏み込んだパワーが1%も逃げずにダイレクトに後輪を回す推進力に変換されます。

現在は生産終了となり非常に入手困難ですが、その圧倒的なストリート感と、踏み込んだ瞬間に背中を強く押されるような爆発的な加速フィールは、すべてのピスト乗りが一生に一度は体験したい極上の名作です。

アウトボードBBと従来のBBの回転効率の違いについては、こちらのスクエアテーパーBBとアウトボードBBの比較解説も非常に参考になります。

日本が世界に誇る競輪NJS認定パーツの極み「SUGINO SG75(スギノ)」

もう一つの最高峰であり、クラシックなクロモリピストから現代のカーボンピストまで、世界中の一流ビルダーが最後に選ぶ究極のクランクが、日本の老舗ブランド「SUGINO(スギノ)」の「SG75」です。

日本の競輪選手が使用するための厳しい「NJS規格」の認定を受けており、職人の手によって極限まで研ぎ澄まされたアルミの鍛造精度と、宝石のような美しいポリッシュ仕上げが特徴です。

SG75は、踏み込んだパワーを完璧に受け止める高い剛性を備えながら、アウトボードBBのような硬すぎるガチガチ感がなく、ペダルを回すたびに足裏にしっとりと吸い付くような「しなやかで滑らかな極上の回転フィール」を提供してくれます。

世界一の真円度と耐久性を誇る「SUGINO ZEN(禅)」のチェーンリングと組み合わせることで、まさにほぼ無音の、絹のように滑らかな世界最高の駆動システムを構築することができます。

まとめ

ピストバイク(固定ギア)におけるクランク長の選定は、単なる身長合わせではなく、ペダルヒットの転倒防止や高回転ペダリングのしやすさといった、ストリートでの安全性と走りのキャラクターを決定づける最重要セッティングです。

ストリートで圧倒的な主流である「165mm」は、ペダルが描く円の直径が小さくなることで、太ももの上下ストロークが減り、下り坂や高速巡航での滑らかな高回転(ハイケイデンス)を楽に維持できると同時に、コーナリング時にペダルが地面に激突するペダルヒットの危険を劇的に回避できます。

一方で、ロードで一般的な「170mm」は、テコの原理が強く働くため、ゼロスタートの加速や急な坂道、さらにはスキッド時に小さな脚力で強大なトラクション(後輪ブレーキ力)をダイレクトに伝えられるトルク重視の走りが魅力です。

身長170cm以下や街乗り高回転クルージング・安全対策を最優先させたいなら「165mm」がベストであり、身長175cm以上やダイナミックなロングライド・パワフルな踏み込みを求めるなら「170mm」が適しています。

クランク長を変更した際は、ペダル下死点での最適な膝の伸びをキープするためにサドルの高さを5ミリ微調整し、極薄ペダルを組み合わせて足回りのクリアランスを完璧に整えましょう。

自分の体格と走りにぴったりフィットする理想のクランク長を見つけて、ピストバイクならではのダイレクトで気持ちの良い加速フィールをストリートで存分に楽しんでください!

クランク長主なメリット・ペダリング特性デメリット・注意すべき点推奨されるピストのライディングスタイル
165mm(主流)ペダルヒットのリスクが極めて低い。円の軌道が小さく高回転(ハイケイデンス)が維持しやすいテコの原理が小さくなるため、ゼロスタートや坂道で少し重さを感じやすい街乗り、頻繁なコーナリング、トリック(スキッド等)を多用するストリート
170mm(標準)テコアームが長く、少ない力で強い踏み込みトルク(推進力)を生み出せる車体を傾けたコーナリング時にペダルが路面に激突するリスクが高まる身長が高いライダー、長距離ロングライド、坂道が多いエリアの走行
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