ピストに太いタイヤは履ける?「28c」や「32c」化のメリットとトラクロ仕様へのカスタム
ピストバイクと言えば、「23c」や「25c」といった細くて硬いタイヤにパンパンに高圧の空気を入れて、アスファルトの上を滑るように走るのが昔からの定番スタイルでした。しかし近年、ストリートのトレンドは大きく変化しています。
少し荒れた路面や段差も気にせずガンガン突っ込める「太いタイヤ(28c〜32c以上)」を履かせ、オフロードも走れるようにカスタムする「トラクロ(トラックロクロス)」や「コミューター(街乗り特化)」スタイルが世界中で大流行しているのです。
「自分のピストバイクにも太いタイヤを履かせてみたいけれど、フレームに当たらずに入るのか分からない」と悩んでいる方も多いでしょう。本記事では、ピストバイクの「タイヤクリアランス(隙間の限界)」の見極め方から、太いタイヤを履くことの絶大なメリット、そして注目のトラクロカスタムの手法について徹底解説します。
太いタイヤ(28c・32c)を履く3つの絶大なメリット
ロードバイクのレーサーでもない限り、街乗りピストにおいて細いタイヤ(23cなど)にこだわるメリットは実はほとんどありません。太いタイヤにカスタムすることで得られる恩恵を紹介します。
段差や荒れた路面への圧倒的な「安心感」と「乗り心地」
- 空気の量(エアボリューム)が増え、サスペンションのように衝撃を吸収する
- 道路の継ぎ目や、車道から歩道へ乗り上げる時のパンク(リム打ち)リスクが激減する
- グリップ力が増し、雨上がりや砂の浮いた路面でも滑りにくい
23cのような細いタイヤは、少しでも道路に溝や段差があるとハンドルを取られたり、ガツン!という衝撃がダイレクトに手首やお尻に伝わってきます。しかし、タイヤの太さを「28c(幅約28mm)」や「32c(幅約32mm)」にサイズアップすると、タイヤの中に入る空気の量(エアボリューム)が飛躍的に増加します。
この豊富な空気がクッションの役割を果たし、ちょっとした段差や点字ブロック、荒れたアスファルトでも、絨毯の上を走っているかのようにフワフワとした快適な乗り心地へと激変します。サドルを変える前に!ピストバイクでお尻が痛くなる原因と正しい乗車ポジションでも解説している通り、お尻の痛みはサドルを変えるよりもタイヤを太くして空気圧を下げる方が、はるかに根本的な解決に繋がります。
スキッドがしやすく、タイヤが長持ちする
固定ギア特有の「スキッド(後輪をロックさせて滑らせる技術)」においても、太いタイヤは有利に働きます。
細いタイヤに高圧の空気を入れている状態でのスキッドは、路面との接地面が小さいため「ピーッ」と鋭く滑りますが、タイヤの同じ場所ばかりが急速に削れてしまい、あっという間に寿命を迎えてしまいます。
一方、28cなどの太いタイヤで少し空気圧を下げてスキッドを行うと、接地面が広くなるため「ズザザーッ」という重厚な音とともに、より安定してコントロールしやすくなります。削れる面積も分散されるため、減りが早い?固定ギアピストバイクのスキッド用タイヤの寿命とおすすめタフタイヤで紹介されているようなタフな28cタイヤを選べば、細いタイヤよりも遥かに長持ちさせることができ、ランニングコストの節約にもなります。
愛車の「タイヤクリアランス(限界サイズ)」の見極め方
メリットだらけの太いタイヤですが、どんなピストバイクにも無条件で32cなどの極太タイヤが履けるわけではありません。フレームやブレーキとタイヤがぶつからない「隙間(クリアランス)」の確認が必要です。
確認すべき「3つの危険地帯(クリアランス)」
タイヤを太くした時に、フレームのどこに干渉しやすいのか。必ずチェックすべき3つのポイントがあります。1. フロントフォークの股(クラウン):前輪の一番上の部分と、フロントフォークの付け根の隙間。また、装着しているキャリパーブレーキのアーチ(裏側)との隙間。
2. チェーンステーの付け根(BB裏):ペダルの軸(BB)のすぐ後ろにある、後輪を挟み込んでいる2本のパイプの隙間。横幅が最も狭くなるポイント。
3. シートチューブの裏側:後輪の縦(外周)と、サドルが刺さっている縦のパイプとの隙間。
現在25cのタイヤを履いていて、上記の3つのポイントに「左右および上下に5mm以上の余裕」があるなら、28cにアップグレードしても入る可能性が高いです。しかし隙間が数ミリしかない場合、太いタイヤを入れると走行中のわずかな歪みや、タイヤに付着した小石がフレームに擦れて塗装を削ってしまうため、サイズアップは諦めるしかありません。
フレームの種類によるクリアランスの傾向
| フレームのジャンル | 履ける最大タイヤサイズ(目安) | 特徴 |
|---|---|---|
| NJS(競輪)フレーム | 23c または 25c が限界 | 競技専用のため隙間が全くない。太いタイヤは絶望的。 |
| 一般的なアルミエアロ | 25c または 28c | ブレーキのアーチに干渉しやすい。28cはギリギリ。 |
| トラクロ・コミューター系 | 32c 〜 40c以上 | 最初から太いタイヤを想定した設計(SurlyやMASHなど)。 |
もし現在乗っているのが【保存版】NJSフレームの魅力と各メーカー(ナガサワ、サムソン、カラビンカ)の特徴にあるようなNJS認定の競輪フレームであれば、設計が23c以下の極細タイヤ専用(チューブラタイヤ想定)になっているため、28cはおろか25cですらフォークの裏に当たってしまうことが多く、太いタイヤ化はほぼ不可能です。
一方で、近年発売されているストリート向けのピストバイク(Fuji Featherの最新モデルや、CinelliのTuttoなど)は、時代のトレンドに合わせて最初から28cや35cの太いタイヤが入るようにクリアランスが広めに設計(アップデート)されています。自分のフレームの年式とスペックシートを確認し、「Max Tire Clearance(最大タイヤ幅)」の表記を調べてみましょう。
オフロードも攻める「トラクロ(Tracklocross)」スタイルへ
もしあなたのフレームが32c以上のタイヤを飲み込める「広いクリアランス」を持っているなら、単なる街乗りを超えて、最新のストリートトレンドである「トラクロ」仕様へのカスタムを強くおすすめします。
ブロックタイヤで未舗装路(ダート)へ飛び出す
トラクロ(Tracklocross)とは、固定ギアのピストバイク(Track bike)で、泥だらけの未舗装路やシクロクロス(Cyclocross)のコースを走る、最高にクレイジーで楽しい遊び方です。
ツルツルのスリックタイヤではなく、表面にボコボコとした突起がある32cや35cの「ブロックタイヤ(グラベル用タイヤなど)」をピストバイクに履かせます。変速ギアもサスペンションもないシンプルなピストで、砂利道や森の中のトレイルに突っ込み、後輪を滑らせながら泥だらけになって遊ぶスタイルが、アメリカのMASH SF(サンフランシスコの伝説!ストリートピストカルチャーを爆発させた「MASH SF」の軌跡)などを中心に世界的なムーブメントになっています。
街中では、お買い物仕様にオシャレカスタム!ピストバイクに似合うフロントラック&バスケット特集の記事にあるような大きなフロントラックを取り付け、太いブロックタイヤで段差を気にせず豪快に縁石を乗り越える「無骨なコミュータースタイル」としても非常にカッコよく決まります。細くて繊細なレーサースタイルとは真逆の、タフで男臭いピストバイクの新しい魅力を引き出すことができます。
まとめ
ピストバイクに「28c」や「32c」といった太いタイヤを履かせることは、乗り心地を劇的に向上させ、パンクのリスクを減らし、スキッドの安定感を増すなど、ストリートの日常使いにおいてメリットしかありません。細いタイヤでガチガチの振動に耐える時代は終わり、現在は太いタイヤで優雅に、かつタフに街を流すスタイルが主流となっています。
ただし、カスタムに踏み切る前には、必ず自分のフレームの「フロントフォーク」「チェーンステー」「シートチューブ」の隙間(クリアランス)を指で確認してください。NJSフレームなどでは物理的に入らないことも多いため、購入する前に今のタイヤ幅と隙間の余裕を定規で測っておくことが失敗を防ぐコツです。
もし幸運にも太いタイヤが入るフレームに乗っているのなら、ぜひ28c以上のタフなタイヤ、あるいはボコボコとしたブロックタイヤへの交換に挑戦してみてください。アスファルトの継ぎ目を意識することなく、時には砂利道にすら飛び込んでいける「トラクロ仕様」の自由な走りは、ピストバイクの楽しさを何倍にも広げてくれるはずです。
